衝撃

Air K

一体何者なのだろうか、この若者は。錦織のショットが化け物揃いの男子テニスの中でもトップレベルにあることは証明されていた。でもプロに転向して2年目の選手が、あのグランドスラムで堂々の5セットマッチを繰り広げ、世界4位に競り勝つ精神力まで備えているとは!
確かに、グランドスラムの魅力である5セットマッチでは、往々にして流れが二転三転するものです。でもこのケースは、2セットアップから明らかに体力的な衰えを見せての2セットダウン。セットカウントが2−2になって流れはフェレールに行ったものと多くの人が感じていたことでしょう。同等の実力者同士であれば3セット続けて集中することは極めて難しいので「もう一波乱」あるかとも思えるのですが、さすがに僕でも厳しいだろうな、と感じていたくらいです。
それがねえ‥、メディカルタイムアウトを受けたことが幸いしたのか、見違えるようにショットが改善されているのですよ。純粋な筋疲労からくるスイングとイメージのズレが少なくなり、けしてベストではないフェレールをまたしても振り回し始めるのです。ただし、フェレールは守備に廻ってからが強いと言えるので、お互いが一歩も引かない展開に。この時点で「ああ、これって今まで何度も見た名勝負のパターンじゃん」と思い至り、「その好ゲームを演じている選手の一方が日本人選手である」ことに感動を禁じ得ませんでした。鳥肌が立ちっぱなしでしたね。
後から、錦織が「4セット目を捨てて体力の温存と回復に努めていた」ことが判って、さらに驚きましたよ。頭では判っていてもそれを実行するのはとても難しいこと。ある意味若さが幸いしたとも言えますが、あの場面でこのクレバーさには舌を巻く。
これがどれくらいの快挙であるかを語り尽くそうとしても無理でしょうね。この国に彼の見ている世界を表現できる存在は皆無なのです。
さてこれでセカンドウィークに堂々と乗り込むことに。ドロー的には自分のいる山の最大の敵を自ら破ったので、セミファイナルまでプレーのクオリティとしての障害はないと言えます。ここからは、まだ発展途上であるフィジカルとの戦いになってくるはず。
Men's Singles Draws
楽しみだ。すでに結果は問題じゃない。彼はフェレール相手に攻撃的スタイルを変えなかったという勲章を手に入れているのだから。