サイクル

素晴らしい5年間だった。「長谷部さん退任」というこの成り行きには、残念というより驚きや喜びの方が大きい。何しろあの川崎フロンターレの監督になることが濃厚だというのだから。まあどうあれアビスパ福岡の監督がリーグで認められたことは確かである。

昨シーズンには望外の初タイトルをアビスパにもたらし、活躍した選手が移籍して、その先のチームでタイトルを取っている。それもまたアビスパというクラブに対しての輝ける功績の一部になるだろう。なにしろ今まで無かったことなのだ。結果にこだわって数字を積み上げたことの意義を考える。

まあ「5年」というのは面白い笑。それもまた繰り返されてしまうのだが、この場合はこれまでと違う。断絶し、新しい哲学の継続によってもたらされた5年間。そこに(大きな)混乱も低迷もない。強度と質を保ち、多くの雑音や困難を乗り越えたと思う。これまで出来なかったことだ。

そこで運営サイドのことは当然評価されるべきだし、この人選がとてつもなく素晴らしかったのは今さら言うまでもないだろう。良いコーチ(指揮官)とスタッフ、そしてピッチで闘った選手たち。「チーム」という言葉の本当の意味を窺い知る機会を得た思いだ。

良いクラブ、強豪には、そのチームを維持する力学が根付いていると考える。つまり鹿島や横浜FMに代表されるクラブだ。他のクラブが彼らに追いつくには彼らが落ちるしかないが、それはもはや考えにくい。そしてその力学はアビスパに生じているのかどうか。来季試されるということなのかと。

次の監督候補も報じられた。「次」を考える上で良い人選だなと思う。しかし某サポーターグループが僭越な反応をしている。嫌な流れだ。茶番といってもいい。

ともあれ、長谷部茂利という指揮官がチームを通して表現していたものをこの5年間、好感をもって見届けてきた。それはこのリーグではユニークなもので、それゆえのアイデンティティを生じさせた。輪郭がくっきりしていて、地味だが堅実で硬質。金や銀ではなく銅のイメージ。まあ金は獲ったのだが。

感謝しかない。少し早いがお疲れ様でした。

ルヴァンカップ ファイナル、そして初物尽くしのホーム勝利

ルヴァンカップのファイナルが凄い試合だった。それは会場の雰囲気がそうさせたのかとも思えるもので、ここまで面白くすることもないだろうと感じるほどだった。

名古屋には山岸とケネディがいるので、やはり肩入れはするが、新潟の初タイトルも見たいなと思ってもいたので、フラットな状態で観戦していた。

セミファイナルで貢献した山岸はベンチスタートということで、その前の勝ち上がりやシーズンでの貢献を優先して永井をスタメン起用したのかなと考えていた。しかしその起用が純粋にパフォーマンスによるものなのだと思わせる永井の活躍ぶりに、衰え知らずという言葉が浮かんでくる。

あの前半を見ると「このまま終わる」ことも考えられたが、チャンスは作り続けていた新潟が1点を返す。ままあることだが、守備に加わったFWの永井が振り切られて上げられたクロスからの得点だった。そして後半ATでのPK。まさかという展開にも、これは面白くなったなとテンションは上がる。こういうことがあるんだよなあ。

そして山岸のアシストとPKを献上した中山のゴールで再び名古屋がリードという展開に「良かったねえ」となった。しかし2度あることは、ということで新潟がファインゴールで追いつくが、これはどこかで期待していたものだ。本当、面白い試合だなあ。

そしてPK戦では「誰が蹴るのか」「山岸は出てくるのか」は当然気になったが、よりによって5人目で登場し、見事に決めて優勝。記事では「7人目だったのが繰り上がった」ということだが、当然ながらこの映像は必ず使われるので「持ってるな」となる。

ケネディにしても今シーズンをほぼフルサイズで戦い、そのプレーぶりも堂々としたものだ。おそらくいくつかの気づきによってそうなったのだろうが、使い続けると決めた指揮官の期待やチームメイトの信頼も後押ししているだろう。こちらも良かったね。

 

さて、アビスパ。良くない時期は乗り越えたように見えるが、やはり攻撃面での物足りなさは続いている。これはもう仕方ないのかもしれない。やれることはやっていると思うしね。この試合のように狙いとはずれても偶発的な得点に繋がった。それは実力の内だと考えるべきだろう。そして相手の柏は勝ち点がどうしても欲しい試合だった。そういう相手に勝ち切ったことは高く評価すべきなのだ。

金森のゴールは久しぶりで、岩崎のゴールともに今季初。出場機会を思えば岩崎には待たされたなと素直に思うが、貢献度が低いというわけではない。必要な選手だから多く出場しているわけで、最近はサブが続いているが、あらためてゴールに向けてフォーカスすることができたのかもしれない。あのエリアで危険な存在になることが重要なのだ。

マテウスヴィオのゴールは仕方ない。あれに触れていた永石の反応に驚いたくらいだ。そういう永石だからあの決定機もセーブできたということだなあ。柏サイドにすれば「ふざけんなよ」となるんだろう。

次は勝ち点差2で上位にいるセレッソか。アウェイということでどうなるかな。期待しよう。

2024年のダービー 2nd leg

しばらく触れていなかったが、もちろんゲームは見ていた。そして何かに言及するのを避けていた。未勝利が続いているが、それは見れば理解できるし、チームが落ちている時はこんなものだろう。積み上げられないし、むしろ失っていったと感じる。

要因はいくつかが絡み合ってのことだと思うし、そういう時に打開できるクオリティもね…まあいいか。書いたらこうなってしまうよ。

ダービーは熱いゲームになった。スコアレスもまた今のお互いの状況では最善だと言えるかもしれない。だからブーイングはくだらない行為だと言える。

選手たちはよくやっていると思う。だからせめてシンプルにストロングを出していってもらいたいし、連係を少しでも高めてほしい。それをやや放棄しているように見えるのはなぜなのか。勘違いだとしても、そう見えるというのは問題視したい。一番言いたいことはそれだ。

次はちょっと楽しみな対戦だが、その余裕はこちらには無いね。どうなるかな。

熱い闘い

この2試合もセットで考えたいものになったかと思う。しかしまずはこの気候の中でのハードワークを称えたい。それは相手に対してもである。

新潟戦は悪い意味でハマったなという試合だった。ただし最小失点であったことは評価できるもので、あの内容で1点しか取れなかった新潟もまた苦しんでいた。アビスパは攻撃に転じる際のパスミスが多く、自分たちの時間が作れないまま終始した。

このホームゲームの成り行きを重く見たのか、ガンバ戦では4-4-2を前半から採用し、プレスもやり方を変えた。前節でも途中から見られたが、今節のそれはかつてのアビスパのそれに近かったと思う。リスクは負うが主体性をより維持できるので、攻守ともに前向きなものになった。

それにしても宇佐美が厄介で、今季の好調ぶりをあらためて印象づけたが、ゴールまでは許さなかった。それが勝ち点につながったのかと。以前は多少消えていても決定的な仕事をするということがあったが、今季のガンバでは積極的に局面に絡んでフィニッシュへの意識も強い。枠外が多くあったのは、こちらの守備ブロックも機能していたからと言えるだろう。

もちろん勝てれば良かったが、内容と結果は等しいものだと感じた。

さて、勝利こそ無いもののチームはよく闘っていると思う。それだけに結果は欲しいところだが、次の相手も難敵である。どうなるかは少し予測しづらくなってはいるので、当日を楽しみにしよう。

105分

VAR導入、ATの厳格化によって「90分」の意識は消え去り、「105分」くらいで考えるべきなのだろう。クーリングブレイクもあってなおさらそう思えるのが、中断明けのこの2連戦だ。

湘南戦はミドル絡みで先制されたが、ATでシャハブが同点弾を決めてくれた。失点シーンは、村上が意表をつかれて何とか弾いたが、パンチングではなかったため相手に渡って決められたもの。あれをDFのミスとするなら、その前提としてGKとのコンセンサスがあった場合に限られるだろう。基本的にパンチングの処理が多かった村上だけに、そういうことになる。DFに出来ることは、予測の範囲を広く持つか、ある程度ヤマを張るくらいか。まあ、都合の良いケースで待っている敵との意識や反応は当然違うのだが。

湘南は本当によく戦っていたが、差を作り出せる選手によってATに同点弾をくらってしまうことに。シャハブは途中出場での得点は初のようだが、それもまた良い兆候と言える。もちろんスタメンを選手たちは望むだろうが、色んな戦い方ができるようになれば、相手との駆け引きもより深まってくるからだ。ウェリントンも残る構成での得点だったことも意味がある。

札幌戦は逆のケースがあって残念な結果になった。先制はシャハブの守備からミスを誘ってPKゲット。よく言われる「外国人選手との間合いの差」というものが影響したのかもしれない。そしてシャハブが素晴らしいキックをして先制。

またこれもよく言われるが「PKのお返し」があって、後半に追いつかれてしまう。映像を見る限り接触はないが、村上もボールに触れてはいない。そういう点では、決定機を妨害したと言えるだろう。だからイエローも出る。そもそもあんなにフリーで通されることが良くないのであって、その後の対処も足りていないのだ。まあ集中を保つことが困難なのは理解できるが。

それでも、またもATに亀川のスーパーな勝ち越し弾があって、さすがに「勝ったな」と思ったが、予想よりも長いATが続いて、予想外のミドルを決められてしまう。「こういうのがあるから面白いんだけどね」とは思いながらも、勝ち切ることの難しさを前節と逆の立場で感じることになった。

ちなみに試合終了のホイッスルの後で、うなだれるペトロヴィッチを見て、とても複雑な気持ちになったね。札幌はこの後、下位との直接対決が続くようだが、彼らが頑張ればリーグが盛り上がるのは間違いない。

2度のリードを守れなかったことに対して、長谷部さんは「ナンセンス」と言い切っていたが、結局そこで厳しくあり続けられるかどうかが、アビスパにとって極めて重要だということだ。

次はホームということで、当然ながら勝ち点3が求められる。期待しよう。

サッカー日本女子代表(a.k.a なでしこジャパン)ーパリ五輪 GL 第2節

Brazil vs Japan - Women's Group C Match 12 - Football | Paris 2024 Olympics

素晴らしい勝利。フットボールにおいて、こうしたことがあることは知っているが、あまりの展開、あまりのゴラッソが強烈な歓喜をもたらした。

スペイン戦で感じたことも書き留めたが、表には出せないな笑。そういうもどかしい内容だったし、そもそもの選考から……やめとこう。

ただし、このブラジル戦では問題に感じていたことが払拭され、今はとてもポジティブにこのチームを応援しようと思える。そうさせてくれたのは選手たちの熱量であるし、見事なパフォーマンスの連続だ。

当然あるはずの田中美南への批判だが、そういうポジションなのでそれは仕方ない。それでも中2日で、さらにこのフル出場で最後まで走り抜いたことがチームを鼓舞したことは間違いない。そして、その判断を池田太がやったことも評価できる。

熊谷紗希がPKを決め、過去のレガシーが呼び起こされた。そして……。清家貴子インターセプトからドリブルを開始。潰されるが、そのままプレスをかけてパスミスを誘った。ああいう時に選手はフラッシュで判断するのだろうが、谷川萌々子は父親からのアドバイスによって、あのアイデアを持ってピッチに入っていたらしい。だからと言って、アレは凄すぎるだろう。意味がわからない、と言えるレベルのスーパーなゴラッソ。

この勝利は勝ち点3以上のものがある。間違いなくそう言える。これで次は引き分けでもノックアウトに進むことができるのも大きいが、チームにもたらす影響はそれ以上だろう。もちろんナイジェリアも難敵だが、この女子代表チームへの信頼度は増している。やってくれるだろう。懸念材料が増えてはいるが、それでも、ということだ。期待しよう。

中断期間へ

この2試合はセットで考えたい。どちらもある程度はうまくいったが、良い時間帯でゴールが取れなかった。そして、広島戦は主体性が伴ったが、東京V戦はやらせてくれた印象だ。凌我のトップは前者では惜しいシーンもあったが、後者では消えてしまった。まあ彼が対応していける選手なのはわかっているので、続けてもいいし、違う活かし方もあるだろう。再度のケガだけは避けてもらいたい。

広島戦では良いところが目立ち、東京V戦では悪い方が目立った。まあコンディションの部分とか、この気候条件で難しいのは理解できる。その中でもチャレンジがあって、実践し、課題が浮かび上がった。トライアンドエラーの先にあるものは、きっと良いものであると信じている。実際、繋がろうとしているし、改善しようとしているのは試合中に見て取れたからね。実戦の中でそういうものが見える時は、良い兆しだと思っている。

そして(予想通りではあるが)COVIDがまた流行してきている。この中断期間は良いタイミングだと思っているので、それを無駄にしないためにも感染対策には注意してもらいたい。

しばらく試合が見られないのは残念だが、パリ五輪では注目している種目がいくつかあるので、それは楽しみだ。

来月の再開でどうなるか。期待している。