18歳が変える

テニスという競技に関わる者、そして草の根のファンが口を揃えると思われる「コイツは本物だ」という存在、錦織圭。この輝ける期待の星は、それこそ曇りひとつ無いのである。彼に比べると、ハニカミくんやハンカチくんは曇りだらけの様な印象なんです。というか、比べるのもおこがましいほど。それくらい、錦織が既に示している内容は素晴らしく、そして確信の持てるものなのだ。
ジャパンオープンとも言われるAIGオープンは、第3日目にしていよいよシード選手が登場し、センターコートには第1シード(フェレール)、第2シード(ロディック)がその勇姿を見せることに。世間的には衆知されることは無い筈ですが、今大会は例年になくレベルの高いメンバーが参戦しており、ちょっとしたセ○コースーパーテニス(懐かしい)なのであります。‥‥しかし!
折しも熱帯低気圧が接近してきており、天候は最悪かと予想され、せっかくのトッププレイヤー達のパフォーマンスが無観客で行われるという事態に。商業トーナメントに対応出来る屋内のテニス環境が都心に1つしかないスポーツ後進国の悲しさを感じますが、まあ仕方ないのかな。それでも、チリの英雄ゴンサレスや、この大会で優勝経験もあるシュトラー、そして美しいストロークを誇るロブレド、そして全豪準優勝のツォンガなどが、もしも初戦で負けた場合に誰にも見届けられることなく日本を去る可能性があったのです。恐ろしい話だ。
それが、マスコミの徹底した煽りも虚しく台風は温帯低気圧になり、暗雲たちこめた明日からの大会運営に光明が。それでも彼らトップランカー達の奮闘がなければ(幸いみんな勝ち残った)、日本のテニス史に汚点を残すところでした。
そんなこんなで、自国のテニス協会の拙さに恥ずかしい気持ちでいっぱいの日本のテニスファンを救っているのが、誰あろう錦織圭という18歳の若者なのです。
国内最大のテニス施設にして、世界最速レベル(古くて表面がつるっつる)にあるサーフェスを有する有明コロシアムにとまどいながらも順応し、シード選手以上の内容を示しているという素晴らしさは、およそ国内のメディアでは伝えきれないでしょうけど。
そして会期途中にして今大会の成果は出たと言っても過言ではなく、一人の国際レベルの日本人プレーヤーが出現した事により、日本テニス界がインフラ面であまりにも「しょぼい」ことを内外に知らしめたことは、僕は良かったと思います。
錦織というアイコンを得たテニス協会が頑張って大会のレベルを分不相応にした結果、(悪天候もあいまって)「このままじゃあんまりだろ」と再認識させてくれたのですから。いや、まだボールの球足が早いくらいなら許せますが、選手たちの足が滑ってバランスを崩すシーンが少なくないのは酷い。現代テニスでは、ベースライン付近での横の動きがとんでもないレベルに到達しているので、そこで安心して動けるコートでなくては良いパフォーマンスは見込めないのです。これはプレー全体のスピードに乏しい国内レベルでは顕在化しない問題点だったでしょうね。いーかげん、新しくしてくれ。照明の明度も足りないはずだし。初めて会場を訪れたときの何とも言えない「淀んだ感じ」は、照明や会場のカラーリングに大きく作用されてたと思うよ!
すっかり長くなってしまったが、そんな拙い運営にも関わらず、フェレールロディックゴンサレスがフルセットでの勝利に執念を見せてくれたのは嬉しいことこの上ない。特にロディックなどは先週に北京で優勝しているから、今週は「トボケて」しまったとしてもおかしくなかったからね。3セット全てがタイブレークという痺れる展開の末に勝ったというのは、ロディックらしくもないのですが、この速いサーフェスはビッグサーバーにとって有利なはずだから、今後が楽しみではあります。問題は、これから盛り上がるところなのに、テレビ中継がCSからNHKになってしまうことか。錦織以外の試合も好カードが目白押しなのに‥