”I wonder how he was able to get that ball”

hal-u2005-06-06

試合後にプエルタはナダルとの対戦を振り返りこう言った。
"I wonder how he was able to get that ball," Puerta said. "He has very strong legs. He moves so well. He runs so fast. He surprised me a lot."
観戦していた誰もが同じ思いだったと思う。
序盤に目の前の若者の実力と調子を体感したプエルタは、トレーナーを呼んで右大腿のケアに時間をとった。その行為の意図の全てを量ることはできないが、覚悟を決めたかのようにそれからのプエルタは、ナダルのトップスピンに対して果敢にライジングで対抗し始める。フェデレでも手を焼いたそれを、綱渡りのようなフルショットで封じようとしたプエルタの判断はハマった。多少のミスを補って余りあるプレッシャーをスペインの若者にかけることに成功したアルゼンチン人は、ついにタイブレークで第1セットをもぎ取った。要した時間は72分。これは前日の女子決勝1試合分に相当した。ウィナーで9本下回り、エラーで5本上回った。でもセットを奪った。本当に凄いパフォーマンスだったが、よもや持つまいとも思っていた。
やはり、ショットの正確さ(エラーの少なさ)、走力、そして滲み出るような精神力‥‥それらにおいて上回っていると思われるナダルが、一息つかなければならないプエルタからあっさりと2セットを連取する。
こうなっては、やはり‥‥と思われたが、実況の岩佐さんがアルゼンチン人の意図を汲み取ったように、あるデータを繰り返す。彼はクォーター、セミファイナルともに1-2からの逆転で勝ち上がってきています、と。
果たして、その通りの展開となった第4セットは、ついに4-4からプエルタがブレークに成功。「ああ、これで‥‥」と感じたのは普通の感覚だったと思う。それを、ナダルは見事に覆した。ブレークバックしてからの3ゲーム連取はなんと言ったらいいのか‥‥。プエルタが「根負け」したなどという表現では済まされない、なんだかとても「あり得ないもの」を観た気がする。このセット、3回あったブレークポイントを全てものにしたのはナダルで、逆に7回中2回しか取れなかったのがプエルタ。真にギリギリの場面での勝負に強さを発揮したのが、より経験の浅いナダルの方だったということが、驚きだ。
  
しばらくは余韻の残る、近年稀に見る素晴らしいファイナルだった。トロフィーのプレゼンターとして登場したジダンなどが霞んでしまうほどに、この二人は最高のテニスを見せてくれた。