アジアカップ ファイナルとその後

すでに10日ほど過ぎてしまったが、カタールとのファイナルはやや不思議な試合だったなという印象だ。

問題視されている前半もそれほど悪いものだとは思わなかった。カタールの先制点もラッキーなものだったから、事故としていつかは追いつくだろうと。しかし確実に残念だったのは2失点目か。受けて立つとこんなものなのだなと、あらためて思い知らされることになった。

とはいえ、これまでアジアカップを制した日本代表がその後どうなっているのかを考えるとこれでよかったのかもしれない。それに最重要と思われたイラン戦で良いパフォーマンスを見せたのだから、大会を通じては概ね好結果だったと言えるだろう。

なにより冨安の活躍ぶりに高揚したわけで、彼はベルギーでの復帰戦で勝利に貢献している。そして、やはりこうなるらしい。

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まあそうだよね。吉田の評価がすでにあるプレミアの可能性は低くないだろう。

ファイナル直前

カタールに負けたUAEが出場資格のない選手がいたとして抗議文を提出しているそうだが、事実関係はともかく「負け惜しみ」としてのアングルは否めないだろう。とりあえず問題になりそうなのは当地でのファイナルがどのような雰囲気でとり行われるのか、だろう。

もちろん日本サイドはこのことを意に介していない。ただ実力でカップを勝ち取ることだけを見据えていることは吉田の会見で発信された。そしてカタールにすれば、このファイナルも完全なアウェーになることを想定しているだろうし、セミファイナルにおいて同様の環境でUAEに完勝した勢いはさらに増すのではないか。当地のプレッシャーが彼らに勝つことの意味を付加させるのではないかと危ぶんでもいる。

それはさておき、アビスパ関連で冨安と三國くんのことなど。

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冨安が井原さんに言われたのは「ゴール前で身体を張れ、気持ちでは絶対に負けるな」ということでおそらくCBにとっては基本的なことだろう。ただしそれを高いレベルで実践することは誰にでも出来ることでは無い。ここで考えるのは「誰に言われたか」ではないかということ。現役時代に体現していた“アジアの壁”が発する言葉は重みがある。

三國くんにしても「監督が変わってどうなるかなと思っていた」と言っていて、やはり井原さんの存在は彼の進路に(その時点で)影響していたと思う。

1992年のアジアカップ優勝。そこから日本代表の変革は始まり、その時主力として活躍した井原さんの薫陶を受けた冨安が若干20歳にして活躍している。その巡り合わせを強く感じられるのは良かったなと思っている。

アジアカップ セミファイナル - イラン戦

一夜明けて各記事を読みつつ、冨安の評価が一気に高まっていることを実感する。

今大会ではまず20歳の堂安が輝いて、アジアカップにおける日本代表の年少ゴール記録を更新したが、それまでは小野伸二だったということで素晴らしい系譜だなと感じていた。だがそれをすぐに同い年の冨安が更新したことで「ああコイツは本物感がさらに増したな」と思っていた。なんと彼は“持っていた”のだ。

前提として森保の抜擢と用兵があるのだが、何しろ実力を示しているので使わない方がおかしい。そうした意味で彼らのどちらかでもロシアW杯に選ばれていたらなと思わずにはいられない。森保にしたら兼任しているU-23のこともあるのだろうが。

それにしてもイラン側はやや淡白だった。いや良いパフォーマンスだったのは間違いないのだけど、守備面では日本に対してリスペクトがあり、攻撃面ではその逆だった。前半はイーブンだったので、ある程度リスクを冒さずに90分かけて敵失を誘うつもりだったのか。実際アズムンは脅威であったし、一人で打開できそうにも見えた。

あの前半は日本側がそうさせたというよりも、イランの振る舞いに合わせた結果だろう。主導権はまだどちらにもない。それを一変させたのが後半の大迫のゴール。PA付近で南野が倒れたプレーに対して主審が笛を吹かなかったことで、逆にイランの選手5人ほどが抗議に集まるが(ダイブを主張したのだろう)、ゴールラインに向かうボールの勢いは弱まる。そして背後で何が起きているか知らない南野がフリーでピンポイントクロス。彼のザルツブルクでのキャリアが生きたプレーと言えるのではないか。おそらく笛を誘うべく上手く倒れたのだろうし、そうでなければイランの選手もあれほどに反応しない。ただし、あのエリアで吹かれていない笛に5人ほどが集結する必要は全く無いので。

結局これが1点以上の差を生んだと思う。そういう構図の失点だった。イランの失意につけ込んだ日本代表の振る舞いも良かったし、とにかく継続してアズムンを抑えていた吉田と冨安、とりわけ狙われていたであろう冨安が本当に素晴らしい。2点差がついてからも安定していて、残り10分くらいではイランは勝負を放棄してしまったかのようだった。

なぜアズムンがあれほどに荒れたのか。それは勝てると思っていた相手(冨安)に抑え込まれたからだろうし、こちらとしても厳しい対人プレーになるだろうと予想していた。なのに終わってみればクリーンシート。感嘆という言葉がこれほど相応しいこともない。

この試合も半端無かった大迫は、試合後のインタビューでファイナルに向けて「結果がすべて」と言い切った。相手はまだ決まっていないが期待しよう。

アジアカップ ベスト4

すでに一流の風格を備えつつある冨安。

次のイラン戦は実力的に事実上の決勝戦と言っていいだろうが、彼の出場はもう疑いの無いところだ。もちろん絶対とは言わないが、これまでのパフォーマンスからすれば異を唱える向きは少ないだろう。何より、若く有望なCBにとってこの対戦ほど重要な機会はない。

そんな彼の活躍と質にバルサ公式も反応している。日本版サイトでは翻訳した記事があるが、こうして本家の公式にリンクを貼ることもそうないだろうからやっておこう。

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もちろん文脈としては、日本でのバルサスクールのはしりである福岡校に3年通っていたことがある、ということなのだが、残念ながら彼がバルサBとの対戦経験がある事実は抜けている。あれから4年近く経って、今や日本代表のレギュラー格になりつつあるということにやや戸惑いつつ、厳しい環境で期待に応え続けてくれている若き才能を見られることが嬉しい。

今大会で日本代表にとって最もDFにフォーカスが当てられる試合になるだろう。期待してます。

アジアカップと2019シーズン

アジアカップを楽しく観戦している。代表に対してこういう気持ちになれたのはかなり久しぶり。もちろんその理由は彼の存在だ。

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初戦でスクランブル的にCMFに配されたのはちょっとした驚きだし、どのようなプレーを見せてくれるのか楽しみだった。前半ははっきり言って萎縮していたし、パスも飛ばされることが少なくなかったと思う。それは仕方ないことだし、大会を通じての初戦でチーム全体も硬さがあったから彼だけの問題ではない。

しかし流石だなと感じたのは後半で、森保もあえて弄らずに彼を試し続けた結果、徐々にポジショニングに冴えが出てきて、積極的に前線にも顔を出すし、またそこからの戻りも早かった。もちろん大迫のゴラッソがそのキッカケになったことは間違いないし、おそらくハーフタイムでの指示もあったはずだ。そしてオマーン戦では本職のCBで使われることに。すでに安定感のあるプレーぶりはベルギーでの経験値を感じさせるし、福岡でも見知ったものだ。

森保の中ではおそらく「アンカー」という役割が彼ならできるのではないか、との見立てがあるのではないか。知る限り日本代表でアンカーを任せられた選手はいないと思う。もしこのポジションを国際レベルでこなせる選手がいれば、戦術の幅は広がるし、代表のメンバー構成にも沿うと思えるのだが。

とにかくも冨安のキャリアは近いうちに上のカテゴリへ移行するのだろうし、そのプレーはこれからも楽しみ。

 

そしてアビスパ。だいぶ若返ったのと、新しい指揮官でなおかつJの経験がないということで、夏以降が勝負なのかな。コアになるメンバーは保持できているので、下手なことにはならないはずだ。どうなるのか、こちらもかなり楽しみ。

 

2018年シーズン

ざっくりと振り返ると、今年のチームは良かったと思う。強度があって、上質なゴールも多くあった。特に惇のFKやリキ・マツダ、レオミネイロのものなどが印象深い。

 

ただし、上位対決で勝ちきれないことが続き、最終的にPO圏外に落ちてしまった。とにかく他チームからマークされ続けたなと感じたし、どのチームも個の強い福岡相手に結果を出して試金石しようという動機付けがあったから、良いパフォーマンスをしていた。J2は手強い。

 

期待していた選手がほぼ出場せずに帰国or移籍などするといったことが序盤にあったが、いる選手たちは常に力を尽くしていたので、そのプレーぶりは見ていて納得のいくものだった。

 

手堅い井原さんの後にベニテスの右腕だったイタリア人指揮官がくるというのは、継続性を感じさせる。とはいえフィッカテンディがそうなのかというと違うと思うので、結局は蓋を開けないとわからない。ただし確実に戦術面で個性を発揮するだろう。

それにしても野心のある人物なら日本の2部に来ることはないと思うが、最近のJのイメージが良くなっているのかもしれないし、結果を出せばより大きなクラブに、ということもあるのかな。ベニテスを補佐していたのなら温厚でないと務まらないような気がするので日本のクラブには向いているのかも。

 

とまれ井原さんには感謝している。悪い流れを絶ってくれたし、その上で一貫性のある戦い方を継続してくれた。来季は柏でコーチ、ネルシーニョと再タッグということで、どうなるのか楽しみだ。

 

昨日今日で来季もいる人、いない人がわかってきたが、ドゥドゥは気になるところ。レオは結局走る面で良いところを見れなかったが、あの腰回転の効いたシュートは一級品だと思う。

 

ではまた来年。

プレッシャーを力に

第33節 2018年9月16日(日)17:03KO フクアリ

 

難しい試合が続くが、率直に言って「悪くない」と思っているしそれが結果に出ない状況に歯がゆさを感じる。

パフォーマンスとしては勝つべきであったし、それが妥当だったと思える。良いゴールが3つあっても勝てないことがあることも誰もが知っているし、そういうこともあるのだから、課題でもあった得点の部分でポジティブに捉えるべきだろう。

圍のプレーは少し残念だったが、GKというポジションはもっとも失点に直結する立場であり、またチームの最強の盾でもある。見込みの確度の高さとさらに外れたときの状況判断、素早いリカバリーなど多くのことを要求されるのがこのポジションだろうから、まずは自信を持ってクリーンシートに対して貪欲に続けていってほしい。

それにしても惇のゴラッソは軽やかでレフティの真骨頂と言えるようなコースと角度だった。昇格争いはまだまだこれから。