王者のプレッシャー

はじめの1歩

全豪の男子決勝、フェデラー対バグダティスは王者フェデラーの圧勝に終わった。
通してみれば、準決勝のキーファー戦と似たような展開となり、やっぱ強いわ‥‥、と感嘆することしきり。
印象深かったのは、表彰式での王者の感情の吐露だった。敗者であるキプロスの若者は、屈託の無い笑顔を時折見せて気丈さを見せたが、勝者であり、遥か高みにいると思わせた王者が見せる涙と声にならないスピーチには、もらい泣きしそうになった。
  
なるほど、No.1ならではの孤独感やプレッシャーがあったのか、と思い巡らせもしたが、だからといって、彼が見せた強さは相変わらずのものだった。とにかく誰もがこのスイス人に向かって、渾身の力で攻めてくる。受けに回って勝てる相手じゃないから(ここはローランギャロスではない)、攻撃力で上回るしか無い。それら挑戦を受け止め、多彩なショットとスーパーな切り返しで相手の心を折ってしまうその様は、「横綱」という言葉も相応しいかも。
シンデレラボーイ(とても20歳には見えないが)の、実に「らしい」挑戦を受け止め、経験と技術、精神力で押し返し、ありえないスーパーショットをさらにありえない角度ではじき返す‥‥。そのようなプレーヤーを観ることの喜びは何物にも変えがたい。
  
いみじくも生涯で2度もの年間グランドスラムを成し遂げたロッド・レーバーから優勝カップを受け取ったフェデラーはこう言った。
「これがわたしにとって大きな意味のあることを分かってほしい」
彼にとっては、この勝利は壮大なゲームの1セットであるのかもしれない。そのゲームはあと3セット残っている。

いつも上手くやるたびに、自分自身に感嘆しています。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/tennis/column/200601/at00007502.html