伊達 vs. グラフ

昨晩、J SPORTSで96年のフェド杯における伊達とグラフの対戦を放送していた。当時民放で放送されたものを再編集したもののようだ。96年におけるグラフは若手の台頭におびやかされつつあったが、紛れもないNo.1。年間での敗戦は4回のみ。その内の1回がこの時だった。
伊達は前年には自身のキャリアで最高位となるWTAランク4位を記録している。その二人が有明コロシアムで国の代表として戦ったのだが、グラフとの差はランク以上のものがあったと思う。それまで6回ほど対戦して一度も勝っていなかったのだ。伊達は左足のテーピングが痛々しく、しかも相手は、おそらくは史上最強といって差し支えのない女子プレイヤだ。善戦こそすれ、勝利は叶わないだろうというのが大方の見方だったはず。しかし伊達は第1セットを先取する。自国での対戦というアドバンテージもあったろうが、故障を抱えたことで開き直れた部分もあったかもしれない。続く第2セットを落とすものの、最終セットはまさに死闘だ。いつ果てるともない二人の戦いはついに10-10という、信じがたいスコアに。
開始から3時間を越えてなおも、パフォーマンスが落ちないというのは、驚愕のひとことに尽きる。尊くすらあった。再三に渡り、ブレイクされてもすぐに取り返す女王のプライドも、地元の声援を一身に受け、走り、打ち続ける伊達の精神力に屈することになる。10-12。生来の性格なのだろう、勝利の瞬間伊達は控えめに両手を挙げ、はにかむような笑みを見せた。
8年前だろうと、トッププレイヤ同士のプレイというのは古びないものだと実感。この時メンバーの一員だった杉山は今年、伊達以来の全英8強を果たし、フェド杯を棄権し、五輪に照準を定めた。伊達はこの年、全英準決勝でグラフと再び相見え、日没サスペンデッド、フルセットの末破れ、9月に引退を発表。現役最後の試合はチェース選手権、マルチナ・ヒンギスとの準々決勝だった。
杉山の後継者は未だ見当たらない。
<グラフ>http://www.tennis-japan.com/graf/recod.html#1996
<伊達>http://www.kimiko-date.com/profile/profile/profile02_c.html