ダービー勝利

試合後のインタビューで山岸が言っていたFWからの守備意識は、リンク先の選手コメントにおけるフアンマの発言にもあり、この2人の攻守にわたる献身性とクオリティは指揮官もコメントで触れている。直近の4試合で10得点というのは素晴らしい数字だ。

前半の序盤からパワーをかけてきた鳥栖に対しても、しっかりと受け止めて主導権を渡さない。その中で少ないながらも前線で2トップが身体を張ってチャンスを作っていたことが良かったなと思う。そして先制点は意外なカタチだった。

朴一圭のゴールキックがやや短いものになって、鳥栖はいつも通りラインを高くしていたところで、志知がダイレクトで弾き返す。もちろんフアンマを狙ってのものなのだけど、なにが絶妙だったかと言うと、ゴールキックの時点ではオフサイドポジションにいたフアンマが、志知のヘディングのタイミングでDFラインに並んだこと。これ狙って出来るコンビネーションとは思えないし、相手にしても虚を突かれたはずで、その状況で判断良く裏へ抜けたフアンマが競り合いにも勝ち、右足で見事に打ち抜いた。やはりフアンマがサボらずに戻っていたことがまず良かったし、志知もチャンスの匂いは感じていただろう。

前半終了前にはヒヤリとするシーンがあったがオフサイドということで、無失点だけでなく、リードしての折り返しは理想的な展開だ。だがやはり鳥栖は後半の立ち上がりでもパワーをかけてくる。アビスパはコンパクトに構えて時間とスペースを与えない。そしてセットプレーの直後に素早く切り替えて、中盤右サイドにいた山岸と金森、そして前のコンビネーションで山岸が裏へ抜けようとするところへ完璧なタイミングで前からスルーパスが出た。あれもオフサイド上等と言わんばかりの動きだったが、それだけ攻めたからこそゴール前で時間ができ、フアンマへ渡す判断もありそうなところで、ストライカーらしく自分で行ったのが良かったし、本人が言ったように、狙い通りではなくとも泥臭くゴールに繋げて追加点。時間帯といいこれも理想的なものになった。

残りは20分以上あるわけで、ここからの振る舞いは気になったが、選手交代が今回は見事にハマって、最終盤では点を欲しがっていたジョン マリやクルークスに引っ張られるようにして攻め切っての渡のゴール。相手がやりたいことをやったような得点だったなと思う。

まあとにかく今までの長谷部アビスパではあまり観られないパターンのゴールが続いた試合で、それは鳥栖のスタイルへの対応のあらわれでもあるだろう。鳥栖はあのスタイルでACLを狙える位置にいるわけで、この試合でもそれを貫いていた。これまでも成果を挙げているわけで、そうした相手に勝ち切ったのは、また一つの自信になるのだろう。

それにしてもやはりダービーの勝利は格別である。チームにはまた次に向けて整えてもらいたい。

勝ちきる

難しい試合だったし、そうしてしまったと言えるのかもしれない。そこはジャッジのこともあったりするし、外的な要因も感じられた。湘南は明確な意図を持って2トップを潰しにきたが、そこでもっと守られないと選手はバックチャージを受け続けることになる。これでいいのかと思うトーンで試合が進んでいたが、チャンスで決定力を示したのはアビスパだった。

志知のふわりとしたファーへのクロスを山岸が折り返す。そのボールは金森に渡ってシュートを打つと相手DFの手に当たってPK。これは当たらなければゴールになったはずのものなのでイエローも妥当である。フアンマが確実に決めて先制。少ないチャンスで決めたアビスパと対照的に、湘南は裏を狙ったり中央突破を試みるがフィニッシュが弱い。それはアビスパのDFがよく対応していたからだろう。

内容からは追加点が必要だろうと感じていたけれど、そこはこちらの良さを消されたことでうまくいかなかったという印象だ。また交代メンバーと試合展開がうまく噛み合わず、終盤はどうやって守り切るかという状況だった。1トップの城後ではボールが収まらないので、時間を稼ぐこともできない。あの失点はグティへの背後からの接触があり「それでも負けてはいけない」という判定だったのだろうが、正直納得はいかない。前方へ移動しているものを後ろから押せば簡単にバランスを崩すからだ。あえて言うなら前線が緩いことで重心が下がりすぎ、ボールホルダーへのプレッシャーも弱かった。そうなると勝ちきるのは難しいし、相手が残留争いに晒されているということもある。こういうこともあると思って今後の試合にも活かしていってもらいたい。

プレミアデビュー

アビスパが鹿島に勝利した同じ夜、冨安がとうとうプレミアリーグのピッチに立った。しかもアーセナルの一員としてスタメンで、である。代表戦のあったカタールから渡英して2日後の出場という慌ただしさだった。やはりエミレーツ航空の便を使ったのだろうか笑。

条件も考慮してのあのプレーぶりなら問題は全くないと言っていい。というかかなりのタスクをすでに課されているようだし、あのボレーが入ったりしていたらそれこそ熱狂を持って迎え入れられただろう。外れたにせよ素晴らしいプレーには違いない。

彼のことだから順応はどうせ時間の問題で、もっと良くなるはずだ。ゴール自体はともかく、あの縦に速いプレミアで彼がチャンスの起点になるケースは増えていくと思われる。チームとしてはどうやら転換期のようで、冨安たち若手が順調に伸びていけば3年後のシーズンには上位を窺えるくらいにはなるのでは。クラブとしてもそういう考えかと。

思い返せばバルセロナBとの対戦で彼のプレーを初めて見て(この時相手にサンペールがいたんだよなあ)、そして翌年の2016年にトップチームでの活躍を観た。そこから5年。ベルギー、イタリアを経て最高峰のリーグへ。こんなシナリオはマンガでもなかなか書けないと思う。

そしていつか欧州の舞台に戻ったアーセナルバルセロナと対戦するようなことになって、そこに冨安がいたら最高だなと思う。まあガナーズじゃなくてもいいけど。タレントがひしめくあのリーグで彼がどのように力を発揮するか、楽しみで仕方ない。

3連勝

以前「これからのリーグ中盤ではチーム全体としてのクオリティを高めていくことが必要かと。そうなれば終盤で面白いことになると思う。」と書いたが、実際にそのようになってきたのかと思わせる勝利だった。

 

もはやただ引いているチームではなく、一体感とスピード感を持って攻守に闘えるようになった。やはり特筆すべきは山岸とフアンマの2トップのことで、DAZNの中継でも柱谷幸一が繰り返しこの2人の関係性を褒めていた。

前半17分に早くもカタチになってPKを獲得。惜しくも得点にはならなかったが、そこで引き摺らない強さがあった。1点目は26分で、点に絡んだ4人の位置関係が良く、鹿島にすればPKを失敗した山岸に注意するわけで、そこを判断良く落ち着いてフアンマへラストパスを送ってゴール。ここで注目したいのは起点になった金森にボールが渡る前。中盤でフアンマが競り、山岸はボールを死守しようと身体を張った。その結果こぼれたボールを中村が金森に供給、という流れがあった。ちょっとしたショートカウンターのようになって、相手に時間を与えなかったのが良かったと思う。

前半はそのままでも良かったが雰囲気として追加点があるなとも感じていたので、あの追加点は驚きではない。ハーフウェーライン辺りからのFKをロングキックで左に通し、一旦下げてから右に大きく展開(宮が左利きであることが活かされている)。湯澤がしっかりとコントロールして金森とのワンツーを敢行。相手の安西との勝負に勝ち、美しいクロスが供給されてフアンマが絶妙なタッチで左隅にゴール。湯澤のこのプレーは「やべっちスタジアム」でときめき、じゃなくてサブイボに選ばれるというおまけ付き。おめでとう。

そして後半64分。この3点目はデザインされたものだと言えそうで、まず志知のスローインからの2トップの狙いも面白かったが、単純にクリアされたボールをグローリがダイレクトで湯澤へ。これが良かったし、素早く呼応してフアンマがゴールへ前進してDFラインを下げさせる。彼はこの試合で2得点しているのだ。そしてボールを受けた金森がいるべき場所にいる山岸へ速いショートクロスを供給。狙いすぎずにしっかりと当てられたヘディングは沖の手に負けないでゴールへ吸い込まれた。PKの時といい、この時の反応といい、良いGKだなと思う。

その後も村上の好セーブなどでクリーンシート達成。この3連勝はすべて無失点というのが良いね。またこの連勝の中に川崎と鹿島が入っていることが価値をさらに高めている。

もはや過去の昇格時の記録も関係ない。そう言っていいくらいにこのチームは良くなった。だからここをベースにして、いかに上を目指すかだろう。指揮官のコメントにもそうした気概が感じられる。残りは10試合、この良い流れを持続していってもらいたい。

クラブ最多勝点

J1でのクラブ最多勝点を更新したということでいつ以来なのか気になった。おそらく2000年の1stと2ndを足した37を上回ったということなのだろう。ただしとりあえずの目標としているのは50ということで、まだまだである。

徳島との対戦は同じ昇格組なので「お互いが良い内容」であればいいなと思っていた。そういう意味では前半は物足りないものになった。とはいえ徳島はシビアに守備で身体を張っていたので、この対決に向けての気持ちは感じられた。エミルのアクシデントはかなり心配だし、同様のケースを実体験として知っている中払の中継時の言及は気になるところだ。

後半で雰囲気が出てきたアビスパは、金森がPAに侵入して、ボールを保持していた中村から緩めのボールが配給される。これは高さを期待したフアンマへのパスにも思えたが、金森についていたカカがはじき返したボールを山岸が競り、絶妙な落としになって反転しながら金森が右足を振り抜いた。鹿島戦以来のゴールというが、この時も山岸が肩で落としたボールを打ち抜いて決めているから、今回のはお互いが感じていたのだろう。金森は前半からよく走っていたので、そういう選手が決めるのは良いことだなと思う。

そしてこの試合でも交替が試合を動かし、決定づけた。ジョン マリの1点目はあれだけ囲まれていても自分で打つことを狙っているからで、彼のフィジカルの強さが活かされたシーンだ。2点目はストライカーとしての読みとスキルが発揮されたし、重廣のパスも秀逸だった。

1-0で終わらないチームになってきているのかもしれないが、無失点で終わらせるためにも攻撃は重要なので良い傾向なのではないだろうか。また次も期待している。

マネジメント

素晴らしい結果となった。川崎の無敗記録は昨年のアウェー大分戦で負けてからということなので、傾向としてなにかあるのかどうか。その大分に対して今月の初めにリベンジをして、その後は柏、広島とのアウェーで2つのドロー。7月にACLがあり、オリンピックの後は主力の2人が欧州へ。前回の対戦時に感じた明らかな差の一因としてチームとしての統一感とスピードがあったが、この試合では後者がやや落ちているように見えた。

とは言え前半はほとんど常に攻められている状況が続いた。中二日でのミッドウィーク開催ということでコンディションを優先させたスタメンは、渡と城後という2トップが走り回って、重廣とカウエがスペースを埋め、タイトに守備をし、宮とグティエレスが門番となり、村上が立ちはだかった。それでも川崎にすれば「いつでも取れる」心持ちだっただろうし、こちらにしても「いつかやられる」と思っていた。旗手の負傷交替は誤算だろうが、替りに入ってくるのが小林だから「どっちにしろヤバい」のだ。

どうにか前半をしのいだアビスパのプランは、2トップの消耗を見ながらどこでスイッチを入れるかなのは明らかで、無失点であればベスト。それが本当に62分まで続いたことで勝ち点の可能性が出てきた。山岸、ジョン マリ、前の3枚替えからの短い時間で明確にスイッチが入り、杉本とクルークスが息を吹き返した。

クルークスのゴラッソに至るまでの厚みのある攻撃は、共通理解としてチーム全体の圧力を増したことによるものだと思えるし、その判断が良かった。湯澤のスルーと裏抜けというアシストも見逃せないが、もはやお馴染みになってきたクルークスの左足の弾道は、早めに打ったことでタイミングを外したためにチョン ソンリョンの伸ばした手が届かなかったか。

秀逸なのはこの後の時間帯も攻め続けたことで、それは今季積み上げてきたものの中でも重要なものだと思う。残り10分は久しぶりの5バックでウノゼロ勝利。

「今季において川崎に最初に勝ったチーム」というステータスを手にしたが、長谷部さんはシーズン全体のことを考え続けている。勝利は素晴らしいが、勝ち点3以上でも以下でもないということで、また次に向けて整えて闘ってほしい。

悪くない

悪くなかった。開幕戦のことはそれなりに記憶が薄れているが、少なくともあの時とは違って、戦えていたと思う。相性としては良くない印象で、ジリジリとしながらも前半は0-0で凌いだ格好だ。

後半に入ってよく知らない選手にスーパーなゴールを決められた。アレは仕方ない。そしてこちらの攻撃はうまく抑えられたのと、良いパスが無かったということで、惜しいシーンもあったが決定機と言えるものはなかった。それでも良いところや進んでいるところは見て取れたのでそれは楽しみである。

この試合では吉田が目についたし、彼が比較的自由に動いているのが厄介だった。要するに嫌な位置に顔を出してくるので、あの得点シーンでもいるべきところにいたなと思う。名古屋は守備では遅れ気味でもしっかりくるので、逆に出血する場面もあったね。総得点ではウチよりも少ないながらも今の位置にいるのはそうした守備意識のおかげだろう。アビスパの選手が身体を張っていないということはなく、ただ相手がよくやったということだ。

次は早くも明日のホームで、相手は川崎。スケジュールで厳しい面はあるが、先月からの余裕のある日程のことを思えば、ベストの布陣で望んでもらいたい。