マヨルカの若者

もうすぐ成年となるナダルが、まだ長くはないキャリアにおいて早くも「伝説」の世界に足を踏み入れた。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/tennis/headlines/other/20060530-00000012-kyodo_sp-spo.html
  
昨年の4月にバレンシアで負けて以来、クレーコートでの対戦において勝ち続けた勝利が54!
それこそ去年のローランギャロス決勝や、記憶も新しいフェデラーとの死闘など、明らかな劣勢を何度も乗り越えた末に達した54という数には、もう恐れ入るしかない。
団体競技と違い、足を引っ張られることは無いと同時に助けられることも無い。全てが個の力量にのみ委ねられているわけで、長い試合ともなれば4時間を軽く越す‥‥
昨晩観た試合に話を移すと、記録がかかっているとはいえ、相手はまったくの格下。とはいえグランドスラム大会に出場する男子選手にただ者がいるわけもなく、実際、北欧人らしく大きな体格を活かした強烈なショットは、若き王者からも随所でノータッチエースを奪っていた。それでも、そうしたベストショット以外の場面では、足と組み立てでポイントを稼ぎ(言葉で表せば簡単だが、それをあのレベルで行えることが脅威なのだ)難なく1stセットを穫った。楽勝かと思われたが、続くセットでは5-5までもつれる。スウェーデンの若者は全てをかけてこのセットを穫りにいくのだが、力で押して勝てる相手ならとっくに連勝記録は途切れているだろう。追いついては離され、追いついては‥‥。結局この2ndセットを落としたソデルリングは心も折れた。3rdセットは1ゲームをキープするのがやっとで、最後はネットミス。この瞬間、ナダルは伝説となり、さらなる記録更新も間違いないと感じられた。
  
それを誰が止めるのか、それとも誰も止められないのか。
  
ところで、今回破られることになった記録の保持者はアルゼンチンのビラス。そのキャリアは輝かしいが、全仏決勝では1勝3敗。その3敗すべてがスウェーデン人との対戦だったことを思うと、今回の記録更新との因縁を感じずにはいられない。全盛期に出場33大会のうち「17大会」に優勝したほどの選手でも、とうとうランキング1位にはなれなかったという。そうなると当時のボルグやコナーズの偉大さを改めて感じるし、翻って今のフェデラーの偉大さもまた凄い、ということになる。

ギレルモ・ビラス