王者の凱旋

フェデラーがとうとう生涯グランドスラムを達成しました。これはスポーツ界全体にとっての偉業でもあるといえるでしょう。彼のとてつもないレベルのプレーはもちろんのこと、プロフェッショナルな言動と行為、そしてたゆまぬ努力と飽きることのない向上心。それらがあらゆるスポーツを見渡しても伍する存在が見当たらないからです。四大大会に関してはこの5年間で準決勝以上進出の記録が「20大会」にまで伸びているというのは言葉に出来ないほどです。今回生涯グランドスラムを達成し、優勝カップのプレゼンターがその前に達成したアガシだった。であれば次のウィンブルドンで優勝し、四大大会優勝記録を更新したあかつきにはサンプラスがプレゼンターに‥そんな素敵すぎるシナリオが妄想よろしく脳内をかけめぐる。
あらためて今回のフェデラーの快挙を振り返ってみたいところですが、またいつかの機会に。
そして筋違いかもしれないが終わりに宮本武蔵のこんな極意を紹介したいと思います。

武蔵が、剣の極意は何かと問われてこう言ったという。
「三尺幅の板がある。地上一尺だったら誰でも渡れるが、城の天守閣から向こうの山まで掛け渡してあったらとても足が震えて歩けないだろう。されど幅は同じ三尺である。高さが一尺であろうと数十丈であろうと、三尺であるという事に変わりはない。そこを見切ってどちらも同じように渡れるのが剣の極意と申せよう」
フェデラーとその他の選手の差はまさにこれであるように感じましたね。タイブレーク、勝負のかかったポイント、フルセットでの身の処し方。誰もがこの王者に挑み、勢いに任せて同じ高みにまでさしかかったところでその景色にすくみあがってしまう‥
そこで臆しなかったのがナダルであり、そのナダルがコンディションを維持できずに敗退してしまったことでフェデラーの優勝はある程度決まっていたのかもしれません。フェデラーという伝説の続きはどこまであるのか。底が知れなくなってきた。