夢のような

昨晩のアジアユース準決勝は、本当に夢のような展開だった。99%諦めていた1点ビハインドでのロスタイム、日本は二度までも追いついた。最後は惜しくも敗れてしまったものの、これは次につながる敗戦といっていい。
ポゼッションで上回るも、なかなかフィニッシュにもちこめない日本と、スピードを活かして少ないタッチで効率よくフィニッシュに至る韓国。ポゼッションで優位にたちながらもそれを結果にできないのは、中盤での展開でパスミスが少なからずあり、また意外性が乏しかったためのように感じた。韓国の高い守備意識を惑わすまでに至らないのだ。そうなると平山というターゲットに頼らざるを得ないが、平山も負けないまでも決定的な仕事ができずにいた。
そこへ後半途中から森本が投入されると、前線で変化が起きる。この少年は常にゴールに向かう意識を持ち続ける、この年代において希有の存在だ。多少「勇敢すぎる」ように見えるのだけど、はじかれてもはじかれてもそのFWたらんとする姿勢は変わらない。密集したバイタルエリアにおいて、少なーいスペースを見つけ、そこにチャレンジするから、韓国DFはとにかくはじき返すしかない。そこからこぼれたルーズボールが次の攻撃へつながる場面も出てきた。平山のポストプレーと同じ効果を生み出していた。ガムシャラというよりも狡猾といった方が当たっているかもしれない。そういう選手をペナルティエリアに入れてしまうと、DFとしては相当嫌なはずだ。日本の1点目は、その森本のアタックから生まれた。
延長に入ると、それまで足をつったような仕草をみせてピッチに倒れ込んでいた韓国の選手たちが生まれ変わったかのようなパフォーマンスで、よく守り、よく走るようになった。こういうシーンは今までも何度も見た。このチームは絶対に諦めない隣国の好敵手なのだと感じ入る。土壇場で追いついた日本の勢いはどこへ行ったのか。韓国は主導権を簡単に渡さないという気迫を込めて、ゲームをじわじわと支配していった。あの勝ち越し点は、まさに「押し切られた」ような点だった。「ペナルティエリアに入れさせるなよ」と思っていたが、そのされると一番嫌なことにアタックし、見事なゴールに結びつけたというのは、敵ながら見事だった。
大熊カントクの「あきらめるな、平山、まだあるぞ」という声がピッチに響く。そんなこの名物監督の熱がうつったかのような平山の同点ゴール。ロスタイムだった、諦めていた。‥‥のに最高のクロスが入り、最高の到達点でボールを捉えた怪物の頭はゴール右隅を陥れた。PK戦はおまけのようなもの、それよりもこのヘディングを見れただけで、もう、ありがとうと言ってしまおう。どうか順調に成長してください、という感じ。
とにかく、この諦めない姿勢、そしてそれをゴールという形にできたということ、これこそが得難い経験です。それにしても、キャプテンマークをつけたDFにヒヤヒヤさせられるのは、もう勘弁して欲しい気もする。