背負い

金メダルをとった谷本。女子選手で彼女のように背負いにこだわる選手は少ないだろう。特に大舞台ではなおさらだ。
準決勝で、ある選手が反則負けになった。それはポイントをリードし、残り15秒くらいから完全に逃げだしたからだ。残り1秒で試合を止められ、主審と副審が協議、その後反則を言い渡された。国際ルールも随分変わったもので、こんなケースは五輪では初めて見た。有効や効果はいくら繰り返しても、試合を決することはできない。技有り以上でなければただのポイントでしかない。しかし、消極的な姿勢や技の「かけ逃げ」による指導は積み重ねられ、最終的には反則負けを喫することになるのだ。(反則勝ち=指導が4つ。または、重大な反則行為があった場合。)
谷本の担当コーチは、古賀稔彦。ただ勝つだけでなく、そこに美学を感じさせる試合運びは、いつしか「平成の三四郎」といわれるまでになった。その指導を受けた谷本もまた、一本勝ちにこだわることで、攻撃的な試合運びで反則とは無縁の見事な金メダルだった。その背負いは凡そ師匠に及ぶべくもないが、研鑽を重ねればもっとよくなるはずだ。対戦する海外選手のほとんどが、自分よりも上背のある選手ばかり。だからこそ懐に飛び込んでの背負いが活きる。
今回の谷本に古賀、野村のアトランタでのコーチが細川だったように、日本柔道の強さとはすなわち、連綿と続くメダルの系譜そのもののように思える。有形無形の影響が才能豊かな選手に与えられることで、このようなメダルラッシュを引き出したのではないか。
また、そういう意味では、某代表監督のあのブラジル人の人選も、あながち間違いではなかったということになるのだろうか。フットボールにおいて、勝者のメンタリティを植え付けることのできる人材は日本にはいない。ガーナ戦やいかに。この大会においての3バックは崩壊した。菊地が出るのであれば、4バックでの右サイドバックを彼に任せてみたい。しかし、今回は世界標準の戦いにおいての3バックの限界を見た思い。