勝ち取った14位

わかってはいたが難しい試合だった。最終節の埼スタは3万人超え。フロンターレ相手のような動員で、今の浦和では珍しくなっている。アビスパの選手たちはそれを楽しむとコメントしていたが、内容を見ればギリギリのところで闘っていたのだと思う。

向こうからすればつまらない試合だっただろう。せめて勝利があれば、というところなのだがフアンマがそれを許さなかった。「これぞJ1」というクオリティのもので湯澤のクロスともに素晴らしいゴールだった。

自陣から前→ルキアンのポスト、という流れがまずあり、そこでフアンマのポジションが良く、ボールを受けた後に湯澤へ。これは前節の柏戦でも見られたもので、山岸の近くにいたフアンマから志知へ、そして山岸が決めたというもの。前線の3人がそれぞれの距離感を意識していて、それが結果に繋がったということだろう。

失点から早い時間帯だったということも価値がある。遅くなれば焦りもでるし、この日の浦和は守備がとても良かった。あそこで同点になることでその後の時間をどう振る舞うかの選択肢が増えたわけだ。これは残留争いをしているアビスパの都合でしかないが、他会場の状況が数分差で先に知れることも手伝って、現実的な判断に至った。

信じてはいたが、実際に残留が決まると何とも言えない感慨があった。それは「これまで残留争いに敗れ続けた」過去があるから。昨季は残留争いにかすりもしない素晴らしいシーズンだったので、実質「初めて残留できた」と言えるのではないだろうか。

夏場以降の苦しい時期、惜しい敗戦を経て、直近5試合で勝点10。「こういうチームが残る」というものを見ることが出来て本当に感動している。湘南やガンバも同様の数字を出しているのだ。なんという厳しい残留争いだっただろう。これもまたクラブの歴史に刻まれるべき快挙だ。

ありがとう、と言うしかない。長谷部さんも続投が決まり、このアビスパはまだ続く。J1で2シーズン戦い、研究されたところから乗り越えて生還した。直近の5試合が特別良かったか、というとそうでもない。このチームはいつも闘っているし、誰かが手を抜けばそこが綻びる。しかしそれを許さない雰囲気を纏ってきている。当然のようでそうじゃないのだ。それが「アビスパスタイル」であるというなら、ずっと手放さずに、磨きをかけてもらいたい。

今から来季が楽しみだ。

あ、田中佑昌が功労選手賞ということで、これも実におめでたい。素晴らしいことだ。彼のような良い選手が離れないクラブになればいいなと強く思う。