驚くしかない

錦織が3大会連続でファイナリストとなり、250と500というグレードで2週連続優勝を果たした。
これまでずっと彼を見てきただけにかえってそのフィジカルとメンタリティに驚かされてしまった。そして彼のキャリアの中でもまったく踏み入れることのなかった場所に到達したと言えるでしょう。それは結果そのものというよりも心技体の面において、ですね。本人すらもこの快挙を信じられないのは仕方ないことだと思う。それでも言わば無心で勝ち取った栄誉を前にして思わず涙があふれたのは自然のことだと思うし、この数年を振り返ってもスポーツシーンで最も感動したシーンでした。
前回の全米直後のエントリでは「のんびりしてもいいよ」と思っていたわけですが、さすがの負けず嫌い。敗戦の喪失感よりもリベンジに燃える闘志を駆り立てている。コート上での振る舞い、佇まいも風格が出てきているのもいいですね。彼が以前から日本人離れしているなと感じさせたのは勝負師としての顔です。「勝つため」の駆け引きが上手いんですよね。時に狡猾でもある、という点がこれまでの日本人プレーヤーには全く欠けていた資質だと思うので、よくもまあこんなタレントが日本から出てきたものだなと。アメリカのメディアに言われると苦笑いするよりないのだけど、やはりジュニア時代からIMGに行ったことが彼の才能を曲げなかった大きな要因だろう。日本の「部活」にありがちな勝利至上主義や上下関係うんぬんが、というよりも、才能が世界中から集まる場所でその優秀さが認められ続けた。この意味を考えると、システムがではなく錦織そのものが希有な存在であることは論を待たない。
そしてすでに上海1000が始まり、堂々のシード選手となった錦織とは対照的に、全米チャンピオンのチリッチは1回戦で消えた。2004年の全米決勝におけるクズネツォワがそうであったように、唐突にスーパーなプレーをする選手がいる。チリッチもクズネツォワのように浮き沈みの激しい選手の匂いはする。望外の達成感もあったろうし、しばらくは低調であるかもしれないし、そうでもないかもしれない。とまれ、やはり錦織のライバルはラオニッチだなあ。
錦織、今回はのんびりしても‥‥