あれもこれも

俊輔の飛び道具2発でドローまでこぎつけたブラジル戦。観ていてまず思ったのが、相手ブラジルのプレーぶりに対しての「これぞサッカー(ラテンと同義)」。高い技術とそれをベースにしたイマジネーションの融合‥‥。長い距離のパスが面白いように通り、センターサークルからゴールまでが速いことといったら。
なるほど、日本人の特徴である敏捷性をもって常にスペースを狙う動きは相手DFを苛立たせもしたが、ボールの動き、展開そのものはまったくもって速くない。トラップ際を狙われ、背後からのチェックでは接触無しにボールを奪われ続けた。何度も何度もDFラインと守備的MFの間のスペースを使われ続け、なかば遊ばれているかのような気さえした。
ただ、そこで引かなかったことは良かった。果たして本番で同様の状況下で同じ振舞いが出来るかどうかは別として。大黒も言っていたように、守備的なメンバーには凄みを感じないのが今のブラジル。だったらなるべくそこでプレーする時間帯を多くしたいが、その構成力はまだなかった。もとより本来のブラジル相手にそれができるチームはまずないか。
それでもどれだけそこにとどまり、自ゴールから遠く、敵ゴールに近くプレーすることが出来るかによって、初めてシード国に勝つチャンスが得られるのではないかとも思う。
速攻ができないんだったら、パスやトラップの精度がイマイチなのであったら、もっと、よりコンパクトなフットボール(欧州的)をしていくべきだと思うのだけど、それをブラジル人監督に求めるのは無茶というものか。受け身になる癖は当分抜けそうもないし、いいチームとやることで力が引き出されるという傾向も相変わらず。自分たちの目指しているものはこれなんだ、この土俵で戦うんだ、という意思が感じられないと、今回のような不思議な引き分けになってしまう。
それにしても同じブラジル人が監督しても全く違うチームになってしまうものだ。あれもサッカー、これもサッカーには違いないが、「これ」をやるために“白いペレ”を招聘したわけでもないだろうに。少なくとも、知り尽くしているはずの母国のサッカーに対して、何らかの対策を立てたようには見受けられなかった。もしそれが答えだというなら‥‥、別にこの人じゃなくてもいいような。