高揚

その存在感でチームを高揚させるタレントというのは、得難いものだ。
  
昨夜のラウルがまさにそれで、大勝のあとの余韻が漂うかのような前半を目の当たりにし、業を煮やしたアラゴネスの期待に、ものの見事に応えた。会心のゲームのあとがかえって難しくなるのは、先日のチェコが証明している(コレルの不在とガーナの出来の良さも手伝ってのことだが)。
だから、あの日のチェコに無くて、この日のスペインにあったのは、まさに
「控えの層の厚さ、に加えてのラウルの存在感」
だったろう。
  
攻撃面で貢献できない“昔の名前で出ています”的なレベルではなく、やはり今でもワールドクラスで競えるだけのプレーぶりは、まだこれからの更なる活躍を期待させる。何しろ守備もやれば、下がってからの組み立て、オフザボールの動き、ラストパスを引き出す駆け引きなど、凡そ考えうるFWの働きを全てこなさんばかりの貪欲さだ(今時当たり前と言うなかれ、そのレベルの高さは滅多に見れるものではないのだ)。
そして最大の目的である得点を、チームが欲しいときに穫った。これが、今後のスペインチームに及ぼす影響はかなりのものだと思う。
  
そもそも、カシージャスプジョルシャビ・アロンソアルベルダ)、シャビ、というセンターラインは、滅多なことで崩れきらない。昨晩のような失態から、そのゲーム中に修正できるだけの経験と洗練がある。その上にルイス・ガルシア、ビジャ、ホアキン、ラウル、そしてF・トーレスがいる。
これはヤバい。
スペインリーグを見ている者にとっては、当然とも思えるパフォーマンスなのだが、その「らしさ」を発揮している代表がどれだけいるのかを考えると、このスペインの内容は大したモノなのだ。
しかも、この先にイニエスタ、セスクまでもが。うーん、絶対値はともかくとして、平均値ではブラジル以上じゃないか。
  
まだ始まったばかりだが、F・トーレスの1点目は、個の得点としては、今のところ大会最高のものだと決めつけることにする。ちなみに、最も美しかったのは言うまでもなく、カンビアッソのゴールまでのシークエンスだ。
これだからW杯は!