今時のテニス観戦で、最大のエンタテイメントは「ナダルが負ける」もしくは「ナダルが負けそうな」試合でしょう。全豪セミファイナルのベルダスコ戦はまさにそれでした。ちょっと前は「フェデラーが‥」だったわけですが。
それも昨年の全米オープンでの満腹のナダル(全仏・ウィンブルドン・五輪を制覇した後の)に勝ったマレーのそれとは別で、今夜のベルダスコはトップフォームのナダルを内容で凌駕していたのです。勝者こそナダルであったものの、この夜の勝者はベルダスコであったと言いたい。基本的にリアクションからペースを掴もうとするナダルよりも、総じて攻撃性を貫いたベルダスコこそがカッコ良かったのです。ワンセットオールからナダルがタイブレークを制し、誰もが「ああ、やはり‥」と思っていたはずが、堂々たる超一流のパフォーマンスでベルダスコが2セットオールのタイに持ち込んだ時には、「もしかしたら今年最高の試合が早くも見られたのか」と思ったほど。その思いは、あのダブルフォルトでの終焉によって確信に変わった気がします。一見あっけない終わり方に見える最後のポイントが、最後までリスキーに戦った証(ダブルフォルト)だったように感じられたからです。この激戦にとても相応しい終わり方だったような‥
グッドルーザーという表現では足りない。勝負に勝って、試合に負けたと言っていいくらいの印象を残した"漢"ベルダスコ。「漢」と書いて「おとこ」と読む。杉山・ハンチュコワがブラック・フーバーに大逆転をした試合といい、今年の全豪はヤバすぎます。そのエンディングがどうなるか‥
ちなみに、"漢"ベルダスコが積み上げたウィナーが95(ナダルは52)、アンフォーストエラーが76(同25)。トータルポイントが192(同193)‥‥
今大会で全盛期を彷彿とさせるフェデラーにとっては、この死線を乗り越えた後のナダルがさらにやっかいになったことは間違いないでしょう。