“アルマダ”戴冠

数年来、スペインリーグのレベルは欧州一だったと感じていた。ちょっと前なら欧州で競争力をもったクラブはマドリーとバルサの二つに限られていたが、そのビッグ2に追いつこうと他のクラブも研鑽を重ね、セビージャやビジャレアルが台頭してきており、加えて昨シーズンは散々だったバレンシアやその逆のヘタフェなども欧州レベルにあるといっていい。
そりゃあ、スペシャルな4大クラブがあるプレミアは欧州を席巻しているけど、下の方は無惨なんですよね。そういう意味で中位の層が厚く、下位と上位の差が他の国のリーグよりも少ないスペインリーグが欧州一だと思っています。
そういうレベルの極めて高い国内リーグを持ち得ているからこそ、代表レベルの選手は国外へ流出しないでいたわけですが、ベニテスリバプールに移ってからは優秀な若手選手をスペインから引き抜いて、異文化であるプレミアの舞台で逞しさを身につけさせるようになりました。陰の功労者といっていいのではないでしょうか。その最たる成功例がフェルナンド・トーレスでしょう。アトレチコが2部に甘んじていた頃に才能を開花させた少年は、折り紙付きのその資質をプレミアでいかんなく発揮し始め、CLでも貴重なゴールをチームにもたらしました。今大会はそのシーズンの延長上にあり、誰もが彼のパフォーマンスに注目していた。でも大きすぎる期待とは裏腹に活躍したのは相方のビジャ。おそらく彼は「自分に期待し過ぎた」のではないかと思います。1対1の場面では必ずと言っていいほど、慌ててボールコントロールをミスしていました。またフォア・ザ・チームの気持ちも強かったんだと思います。
そんなトーレスにとってEURO決勝は重すぎたかもしれないのですが、ここで一つの幸運があったんだと思います。それはビジャの欠場によって、自分の持ち場に自由なスペースが出来たということでしょう。また、足元がけして巧くないドイツDFが相手だったということも要因として挙げられますね。彼のスピードはさだめし脅威であったことでしょう。だから、あの得点シーンはラームにとっては「有り得ない」ものであっただろうし、トーレスにとってはある程度の確信があったプレーだったんだろうなと思います。その瞬時のイマジネーションと実行に移す運動神経はまさに“神の子”と呼ばれるに相応しいもので、何回観ても鳥肌がたちますね。
まあとにかく、今回のスペイン戴冠はチームの総合力で勝ち得たものであることは間違いないし、スペインがこれまで辿ってきた道が間違っていなかったわけです。技巧をこらして醸す極上のスペインフットボール、堪能しました。
ちなみに個人的にはキチンとトーナメントで調子を上げてきたイニエスタが攻撃面のMVPであり、守備面は言うまでもなく聖カシージャスであると感じています。今回のEUROは前半をオランダが、後半をスペインがそれぞれ盛り上げた格好ですね。攻撃に優れたチームが結果をだした、いい大会でしたね。
あと最後にマイク、初ゴールおめでとう!