「偉大な王者には強い2位が必要だ」ということですが、今のマドリーはまさにその“強さ”を発揮しているといえます。
やはり時間がかかってしまった新規加入選手たちのチームへのフィットが、ここにきてようやくカタチになってきているように感じますね。エメルソンにディアラ、カンナバーロといったセンターライン(チームの背骨)が周囲と溶け込んだことに加え、ベッカム騒動での選手たちの団結などもありましたが、より単純に言えば「不良債権」ともいえた2人の偉大なブラジル人選手をチームから切り離せたのが大きいのでは。
その2人とは、ロナウドとロベルト・カルロスのことですね。2人とも今さら触れるまでもないほどの素晴らしいプレーヤーですが、前者は度重なるケガで、後者は年齢によるフィジカルの低下で往年時の輝きは失われているというのが妥当な評価でしょう(といってもロナウドは30m走ではミランでトップの数値を出し、ロベカルは100mを10秒台で走るという!)。まだまだクオリティでは十二分にトップレベルでの競争に勝てるわけですが、あのカペッロにかかれば「チームに貢献できない選手」となってしまう。
話は変わるが、あのワンタッチプレーのお手本にもなる小野伸二がオシムの構想外になっている(?)のも似たようなケースですかね。彼が入った代表を見てみたいものなんですが。
話を元に戻しますが、彼らが試合に出れば確かに決定的な仕事はできます。それは間違いないですね。それこそチャンピオンズのファイナルというような修羅場では、均衡した中でのワンチャンスをものにする彼らのようなタレントが有用なんでしょうが、言葉を選ばずに言うと「美味しいとこ取り」の感は否めません。苦しい時に率先してチームを助けることのできる選手(いわゆる汗かきタイプ)こそが重用される傾向は、近年の流行でもあります。
それでも今季途中で加入したガーゴなんかは、そうしたタイプの選手でもあり、マドリーにふさわしいスキルも持っているため、よい補強をしたと思いますが、カペッロが期待したほどにはフィット出来ませんでした(時間の問題だけとは思いますが)。そういう誤算はありましたが、結局はシーズン当初の補強策通り、エメルソンとディアラが持ち前のポテンシャルを発揮して、マドリーの中盤でボールが動くようになってきました。厳しいプレスを軽やかにかいくぐるあのパスワークが安定してくると、前線のニステルに守備の負担が減ったラウル(グティ)や左のロビーニョが絡んで数多くのチャンスメイクを繰り広げることになる。これは面白い!
活躍の為に周囲の気遣いが必要な選手が2人いなくなったことで、マドリーは身軽になり、堅実さを伴ったスペクタクルを見せ始めたわけです。
セビージャとの直接対決を制して、王者バルサへの挑戦権を得たマドリー。最終節までもつれれば、エールディビジ以上の盛り上がりは必至ですね。
ちなみにロニーは、「昨季ほどではない」なんて言われていても数字上はチーム総得点の1/3に絡んでいるわけで、彼のようなタレントがいるがゆえのバルセロナなんだと言えますね。どいつもこいつも犬のように走り回るだけじゃつまらない。