ソクーロフ「太陽」

「太陽」(原題:Solntse 英題:The Sun)を観た。
  
あの対象をあのアプローチで描こうとしたところは評価できるんだよね。ただ、結局は鑑賞前からあった違和感を払拭するには至らず。
  
ロシア人があの時期に何をしたか、そのロシア人が一体何を表現しようと言うのか──そうした先入観が僕にはあるわけだけど、この作品は徹底的に焦点を絞って個人の「生態」を描こうとし、こちらの偏見からするりと身をかわしている。
  
なるほど、それもいいだろう。当時のフィルムを再現しているかのような手法で映し出した部分(公的な証言・資料に基づいている)と、そうでないフィクションの部分。主題はもちろん後者だし、それをはっきりとわかるようにした点には良心が感じられないこともない。でも、この作品は意外と普通に映画的にすぎた。それがつまらなかったなと。そこで始めに立ち返って「どうしてロシア人が昭和天皇を描いてコレなんだ」と思わずにはいられないんだよなあ〜。敬意を払っているとでも言うのか‥‥?
  
ところで、パンフレットを読めばわかることだが、日本人キャストの一部がとあるシーンの撮り直しを頑迷に迫ったそうだ。それに対して監督は「ただのフィクションに何故そこまで言われるのかわからないが、そこまで言うなら」と、その要望を受け入れたという。
  
ただしこれは主人公の扱いに対してではなく、歴史認識の部分というのが面白い。結局はあくまでフィクションとして撮りきった作品全体に及ぼす影響など皆無だったわけだけど!
  
そして、イッセーさんの演技が相変わらず周りと絡まなくて(狙わなくてもそうなる)、それが上手くいっているというのが滑稽だし、物悲しいよね。