予想通り、平坦な道ではなかったけどようやくJ1のレベルに成長した。胸を張ってそう言える。
シーズン当初の高揚感が結果に繋がらず、J2では感じられなかった敵の圧力に腰が引けていた時期もあったと思う。中断期間を十分な準備に充てることもできなかったが、再開後の戦いぶりは「何か」が変わり始めていることを示唆していた。「変わる」=「良くなる」ではなかったが、敢えてチャレンジした結果が今だということは間違いない。
それを「遅かった」と見るか「よく間に合った」と見るか‥それはシーズンが終わってからの評価になる。でも、こうして立派に戦えるようになったチームが来年も同じ舞台で見れないとしたら勿体ないね。
J1第28節 福岡2-1磐田
ゲーム内容は前節・前々節と同じく、ポゼッションの意識が高い相手に対してコンパクトに保ち、無理をせずに全員守備で万遍なくプレッシャーをかけ、ボール奪取の勝負所は低く設定し、奪った後はサイドの裏を突く──という感じ。とかくリアクションになりがちなこの戦い方は、プレーそのものも受け身な心理に陥り易い。ただし、今のアビスパはこのやり方を能動的に選択しているから、「攻めるために守る」ことが出来ているように感じている。とにかくサボるヤツがいないんだ。
そして、攻めるべきときには頭数を増やしてリスクもかける。3人目、4人目の動きが当たり前のように出来るようになってきたのは素晴らしい。それも40mもの全力ダッシュでだからね。
1点目の北斗のゴールは誠史のクロスを信じてスペースへ走り、そこへ来たのをスーパーなスライディングキックで叩き込んでのもの。誰かが手を抜いていたらありえないよ。FWはFWでそれぞれのポジションをとり、マーカーを動かしているから、あの速い展開では必ずスペースが出来る。そういうスペースをこれまで無駄にしていたことが多かったが、これを狙えるようになったのは大きい。
2点目は選手交代による意図がものの見事に実を結んだカタチか。「まだそんなに走れるのかよ」というような誠史のドリブルに反応したのは、敢えて遠いサイドに突っ走った佑昌で、彼のスピードが真に活きたシーン。誠史のクロスはDFラインの裏をなめるようにして佑昌に届く、それをトップスピードのまま折り返すと、そこに走り込んだ城後がインサイドでゴールへの「パス」を送る──。代表GKの手も届かない、素晴らしいパスだったね。勝利を決定づけた瞬間だ。
夜にそのシーンだけ録画で見たんだけど、DFから誠史にバスが出てからゴールまでの時間は「14秒」!世界中見渡したって、あんな見事なカウンターは滅多に見られるもんじゃない。
守備面での規律と、攻撃時のリスクをかけた全力勝負。ここにきて実効を伴ってカタチになりつつある攻守のバランスだが、何よりもチームが戦う意思を前面に出して、勝つためのイメージを共有している(かのような)メンタル面での成長が喜ばしい。これぞプロチーム、と言える。
ベテランが流れを作り、若手がのびのびとやり、誰もがハードワークを惜しまない。最高です。
そして最後に付け加えるなら、ホベの不在を感じさせなかった佐伯のプレーを讃えたい。続かないと意味はないし、もっとやれると見ているんだけどね。お得意の肩トラップも出まくり。
広島のところまで届くか。今日ばかりはセレッソに頑張ってもらいたいような。(FC東京も広島と同じ勝ち点なんだけど、広島の方がより近い気がするのは偏見です)