気合と根性だけでは難しい

先日、J1で広島ー名古屋戦が中止になった。経緯としては、まずグランパスの1選手が陽性と判定されて、その後さらに試合当日になって選手とスタッフに1名ずつの陽性が確認されたことからリーグ側は中止を決定。早い対応だったと思う(その後さらにグランパススタッフから1名が確認されて計4名に)。

ひとつ注目したいのは中止決定前のこの記事。

名古屋グランパス、24歳DF宮原和也の新型コロナ陽性を発表。クラブ内に濃厚接触者はなし | フットボールチャンネル

ここでまず名古屋の保健所は「"濃厚接触者"はいない」としていたことだ。だからクラブ側は試合に向けて広島へ移動したのだが、出発前に「スタッフ60名は25日にPCR検査を実施し」ていたことから試合当日に前述の結果がわかったことになる。

アビスパでも先日スタッフの1名が陽性ということで、迅速なPCR検査実施と全員陰性の判定結果を得た。ただし断っておきたいのは、「最初の1人が必ずしも外部で感染したとは限らない」ということ。感染していても無症状の人はいるのだし、その人がすでに陰性になっていることはあるのだ。グランパスのケースでも判明順が経路ではなく、症状が出たかどうかに過ぎない。

グランパスアビスパの対応を見るにつけ、Jリーグ内でのコンセンサスはあるようで素晴らしいなと思う。"濃厚接触者"にこだわってPCR検査を拡大せず、かといって医療体制は現場任せのこの日本の状況において「どうやってリーグを継続できるか、クラブを守れるか」を考えてくれているのだなと強く感じる。

福岡市、および福岡県では昨日過去最高の陽性判明者数が発表された。今後も地元のクラブを応援していくためにも、観る側によるリスク回避などの再認識が要るのだろう。

 

3連勝

3連続のウノゼロ。というか開幕戦含めて、勝ち試合はすべてということになる。ただし実際にはこれまでこちらのチャンスはファインセーブに防がれて、という場面はいくつもあった。そしてこちらのピンチは明らかに少なくなっていると思う。

つまりチャンスの数や質は継続して保持できている。特にこの岡山戦ではSBの質の高いクロスがチャンスを作り、そのうちの一つがゴールに繋がった。その他にCKやFKでもピンポイントと言えるボールを供給できるのは大きな武器だ。

また石津が戻ってきて、福満をひとつ前にポジションを移すという判断も面白い。これは遠野を休ませて連戦に備えることになるし、さらに前も戻ったので今後うまく回せそうな起用である。セントラルでも前と惇という組み合わせがあるだろう。

フアンマの途中出場もアリだろうし、固定しないことで攻撃面でのコンビネーションの深化は難しくなっても、今後続く厳しい日程でできる限り合理的にチームを運営していくことの意味はある。今季においてはその辺りの工夫が各チームでどうなされるかは注目したい。

そしてこの厳しい状況下で、クラブやチームのために尽くしてくれている選手とスタッフ、その周りにいる方達に感謝している。

J2再開後

再開してから少し経った。と言ってももう5試合消化したことになる。

琉球戦は再開後の一戦目で良かったかも知れない。試合勘の無さ、無観客など、アウェイの不利を打ち消す条件が揃っていたから。
そして長崎。いよいよ本格的に再開したなと思える内容で、スタメンを見るにおそらくこちらにトラブルがあったとは思うけど、それは手当てされたし、惇のゴラッソはその証だ。交替策で相手との差があり、ある意味自滅してしまったとも言える。
指揮官は「開幕ホーム」に拘ったが、選手はそれを受け止められない、というような齟齬があったように思える。負けていい試合ではなかった。
そして京都戦は不運が重なったが、まあ初めてじゃない。

ここまでとしては、琉球戦は仕方なかった。あとの2つは結果はともかく内容は問題無かった。もちろん手放しでないにせよ、強度もありセントラルの2選手はとても良く振る舞った。闘っていたと思う。
だから、この後の連勝は頷けるものだし、なにより結果が出せて良かった。

現状は6位。再開後には上位5チームの内4つと対戦したことになる笑。そこで2勝2敗だが連敗後に取り返したことと、クリーンシートを続けたことが良かった。モチベーションの高さを感じさせる一方で守備に回る時間帯の長さからくる弊害も見えた。

DFラインとセントラルのブロックは安定してきている。ここの精度が前線を活性化させるのかもだし、前線がこれから精度を上げれば後ろも助かるだろう。次は岡山ということで難敵が続くが、正しく準備をしてもらいたい。

VAR見送り?

Jリーグの再開後にVAR実施を見送るかどうかを検討しているということだが、Kリーグは実施している(導入は2017年シーズン途中から)。 先週末のKリーグ第5節、FCソウル全北現代では前半ATのパク・チュヨンのシュートがクロスバーに当たってゴールライン際に跳ねたボールがゴール外に出るという例のアレが。

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流れの中ではゴールは認められず、そのまま進行しかけていた。ハイライトなのでこの後の流れはわからないが、おそらくソウル側の抗議、主審の要請、VAR側から主審に交信となり、スロー映像を確認してゴール認定、ということだろう。VARの環境がどうなっているのかは気になるところで、モニター群の前には3人いるように見える。マスクは当然着用しているようだ。

JリーグはVAR専用車を各試合会場に送ってその中で審判員2人とオペレーター、オブザーバー達が同席することになるそうで、写真で見る限りかなり狭い。もし運用するなら換気のことなど新たな対策も必要だろうが、実際のところはもとより懸案だった人材の確保なのだろう。過密日程が予定されているため、その部分がより強調されることになった。

とりあえず無観客の間は静かな環境でプレーされることになるので、こと接触に関するファウルは取られやすくなるし、選手側もそこは考えているはずだ。しかしこのような際どいゴールの判定はテクノロジーに頼らないと厳密なものにはならない。まあ去年までと同じ、と考えれば大したことでもないのか。J1のことだし。

まあどうあれ、このまま状況が悪化することなくリーグ再開となれば今月末からはこうしてライブのフットボールを楽しめるのだなあ。そしてこの試合、邦本は途中出場ということで残念だが、全北現代の2点目、イ・スンギのゴールがとにかく素晴らしい。パッと見た感じ、彼はまだ若手のように思えたが32歳で代表経験もある。

そのスンギと交代で入った邦本はチャンスも作ったようでラルス・フェルトワイクがあれを決めてくれたらアシストがついたね。 フェルトワイクは南アの選手で主にオランダでキャリアを積んできたようだ。しかしまあ、全北現代は強いし選手層も厚い。

そんな全北現代も出場するACLだが、なんと残り全日程を行うつもりらしい。さすがに中止かと思っていたが。

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もしそうなれば横浜FMFC東京、神戸にとっては移動のことも考えると超過密日程どころじゃないだろう。Kリーグ1は従来の3回総当たりから2回に減らしているのでミッドウィークの試合は少ないだろう。Jリーグは減らしようのない形式なので8月まではミッドウィーク開催を分散して、9月以降はびっしり、という感じだろうか。なんにせよ、選手達には無理のない範囲でその時点のベストを探ってもらいたい。怪我が一番ダメだから。

 

邦本(쿠니모토)フル出場

youtu.be

Kリーグは3節を終えて全北が3連勝。そして邦本は初スタメンでフル出場している。

このハイライトしか見ていないがよくボールが回ってくるようで、特に左右に散らすシーンが多いようだ。前半はスコアレスだがやはり全北が主導権を握っているようで、後半開始3分でブラジル人のムリロが個人突破でファインゴール。

これで勢いづいた全北は後半22分に邦本が中央から左SBのキム・ジンスへパスを出すと自らゴール前へ突進、フリーとなり見事なクロスをPA中央でヘディング、惜しくも相手GKに止められたがこぼれたボールをCho Kyu-seongが押し込んで追加点。邦本のアイデアが光った場面だ。

キム・ジンスは新潟に在籍していた選手で、ドイツのホッフェンハイム経由で全北へ。Cho Kyu-seongはU23代表のようで、邦本とは同学年。

それにしてもこうしてハイライト動画のタイトル画像に選ばれるのだから、この試合の中心にいたということなのだろう。素晴らしい。

Kリーグ開幕

お隣の韓国は新型コロナウイルスへの対応をスピード感を持って行った結果、とうとうKリーグを開幕させた。

そして慶南から全北に移籍した邦本が途中出場している。全北は言わずと知れたKリーグの雄であり、そのようなクラブに彼が所属していることは素晴らしいことだ。

全北は4-1-4-1、水原は3-5-2。

スコアレスの展開で後半16分に全北は2枚替えをする。イ・ドングクと邦本が投入され、システムも変わったかもしれない。とりあえず邦本が出場したところからしか観ていないが、彼は中盤で流動的に動き、多くの時間はセントラルMFのようでもあったが、基本的に全北が押しまくっているので高い位置にいることが多かった。やはりアクセントになっているようで、ショートパスも多く使ってテンポよくプレーしていたと思う。得点に直接絡むことはなかったが、左右に散らしながら探りを入れていた。

そしてCKからイ・ドングクのゴールが生まれる。ゴール後のセレモニーは手話で「尊敬」を意味する、右掌の上に左手で“いいね”をのせるジェスチャーだった。これは韓国で流行っている「おかげさまチャレンジ」の一環だという。

「おかげさまチャレンジ」は新型コロナウイルス防疫のため、尽力している医療従事者などの人々にSNSを通じて、感謝の気持ちを伝えるリレーだそう。そして特に抱き合ったりというスキンシップを極力さけて、ハイファイブグータッチに替わった。

試合後はやはりセレモニーを排して、さっくりと退場していった。選手からは「サポーターの存在の意味を強く感じた」というコメントもあったそうだ。

実際、観ていても公式戦の激しさはなく、やや淡白な印象は否めない。まあこれは準備期間のことなど、彼らのコンディションがどのレベルなのかわからないので、「開幕戦」がこうなるのも仕方ないのかもしれない。

特筆したいのは「この試合がドイツ、英国など36カ国で放送された」ことであり、フットボールに飢えていたし、そこに邦本がいるということもまた嬉しく思う。

懐かしい

 リーグ中断が続く中、DAZNでは過去の名勝負を取り上げ始めている。この試合の見どころはやはりカズのプレー、そしてハットトリックだろう。翌年にセリエAへレンタルで渡ることになるが、かの地では残念ながら怪我もあり期待されたほどの活躍はできなかった。

しかしこの93年から96年あたりのカズは間違いなく日本サッカー史上最高のストライカーだった。この試合でもキレのある動きとシュートの意識、そして決定力。ヴェルディ自体が当時とても良いチームだったこともあるが、決め切る能力は日本人離れしていたという印象。実際この試合でもこの後の絶頂期を予感させるプレーぶり。

国立競技場に5万人が入り、観客の声援では黄色いものが目立つ。当時は博多の森でさえチケットは手に入りにくかったのだ。

こうして見返すと、現在と比較して技術面とプレースピードでの違いがやはり目立つが、全体としてそれらが各チャンスに繋がっているので、十分楽しめる。あまり評価していなかった北澤や武田の良さも今ではわかる気がする。

リーグ再開はまだ先に思えるが、黄金期の各チームの試合を見られるのは良いね。ジュビロやレッズなど、掘り返したら「名試合」はいくらでもある。